本と映画とドラマの感想|サトーのブログ

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砂漠で孤独に出会う『春にして君を離れ』感想    

 

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こんにちは。
春になったので、タイトルに「春」とある本を読んでみたサトーです。


砂漠でひとりっきり

『春にして君を離れ』
アガサ・クリスティー/中村妙子

 

 

 

アガサ・クリスティーミステリ以外も書いてるって
知ってましたか?
この小説はどのジャンルになるんだろうと思ったら
ロマンス小説になってるんですね。
これ、ロマンスか?ってちょっと思いますが
まあいいでしょう。

 


ストーリー

イギリスに住むジョーン
バグダッドにいる娘の看病のため旅に出ます。
その帰路で、砂漠の中にある宿に泊まりますが
雨のため帰りの汽車が遅れてしまい、
何日も砂漠の宿に足止めされてしまいます。

 

その宿の客はジョーンひとりきり。
汽車も車もこないし、話せる相手はカタコトの地元スタッフのみ。
持ってきた本も読んでしまって
やることがありません

 

日中、ジョーンは砂漠を散歩します。

 

果てしない砂漠をひとりっきりで歩くうちに
家族のことを考えたり、過去の出来事を思い出したりします。

 

そうすると、あの時のこれは正しかったんだろうか、とか
あのとき夫はなぜ、あんなことを言ったんだろう、とか
子供たちは本当は私を嫌ってるんじゃないか、とか
いろいろ考えちゃうんですね。

 

普段のジョーンなら考えないようなことを
考えて、不安になってしまうんです。

 

その、今まで正しいと思っていたものが
実は正しくなかったかもしれない、と思い至って
ジョーンが砂漠でくよくよ考え続ける話です。

 


砂漠でパニック

どこが面白いかって、個人的には
頭ガチガチで自己中心的なジョーンが
砂漠でパニックになっていく過程ですね。

 

普段のジョーンは、ものすごい自己中心的なんですよね。
正しいのはいつも自分で、
家族や他人を否定してばかりで
自分の好きなものや、理想を家族に押しつけたがるんです。

 

話し方は優しくて丁寧なんですけど、
相手を自分の思い通りに動かそうとするんですね。
まるでマニピュレーターです。

 

彼女の夫ロドニーはもう諦めたみたいなんですが
子供たちは反発します。

 

そんなジョーンが自分のやってきたことを
振り返って、やがて反省するまでに至る、
その心理的な描写が実に見事なんです。

 

なぜだか読んでる側も、すこし恐怖をおぼえるんですよね。
そのへんがミステリ作家のアガサ・クリスティー
手腕だなと思いました。

 

 

家に戻ったら・・・

で、ジョーンは改心して、
もっと夫に優しくしよう、これまでのことを謝ろう
と反省するんですが
これがあら不思議。

 

家に帰ったらその決意は吹っ飛んで
いつもの嫌なジョーンに戻ってしまうんですね。

 

非現実な世界で孤独を体験すると
やはり人間を一時的には変えることができるんですが

住み慣れたホームに戻ってきて安心して、
孤独でないと実感すると、元に戻るんですね。
このあたりの書き方も非常に上手いなと思いました。

 


春は馬車に乗って

『春は馬車に乗って』
横光利一

 

 

 

こちらもですね、
タイトルはロマンティックなんですけど
悲しいお話です。

 

病気の妻と、その夫。
ふたりは仲良く穏やかに暮らしていますが
妻はだんだん弱っていき、死期がせまります。
そんなふたりの日々の連なりです。
そうしてやがて春がやってきて・・・
そんな話です。

 

ちなみに、私がこの本を読んでみようと思ったのは
「三人称一元視点の代表作だ」とどこかで読んだからです。
読んでみて、なるほど~これが三人称一元視点か~。
と思いました。

 

『春は馬車に乗って』は青空文庫でも読めるので
興味がある方は読んでみてください。

 

それでは、お読みいただきありがとうございました♪