本と映画とドラマの感想|サトーのブログ

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意志の自由ではない、ミルの『自由論』感想

 

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こんにちは。
ひとくちに「自由」といっても、意志の自由、思想の自由のほかに、
市民的な自由、社会的な自由があることを最近知ったサトーです。

 

この本には、

意志の自由ではなく、市民的な自由、社会的な自由について論じる

 

とあります。
著者はイギリスの哲学者ジョン・スチュアート・ミルです。

 

面白かったので、たくさん引用してしまいました。
怒られないか心配です。


自由にもいろいろ

『自由論』
ミル/斉藤悦則

 

 

市民的な自由、社会的な自由といっても
その中にもいろいろな自由があるわけですよ。

 

いろいろな立場や視点から考えた「自由」が
論じられているわけです。

 

なので私が下手に説明するより、
読んだ方が早いと思います。
その方が理解も深まるでしょうから。

 

ただそれだと感想にならないので
気になったところをいくつか取り上げます。

 


表現の自由にも限界がある

例えば

表現の自由があるといっても、表現のしかたは穏健なものでなければならず、公正な議論の限界を超えてはならない。

 

これは近年のSNSでよく見る、
表現の自由を振りかざして気に入らない相手を攻撃したり
誹謗中傷する行為が思い浮かびます。

 

ミルは表現の自由にも制限を設けているんですね。
何でもありではないのだと。

 


少数派と多数派

例えば宗教の宗派について。
(カルトではないカトリックなどの伝統宗教のこと)

 

自分が少数派の立場にある特定の問題について、ひとびとの感情を一変させるために努力するのは好むが、さまざまの少数派と連帯して、自由の擁護という共通の大義を掲げることはしなかった。

 

とのことです。
自分が信じる神を布教することには熱心だけれども、他の神は認めない、ということなんでしょうか。

 

これは現代社会の組織の派閥とかにも当てはめることができると思います。

 

多数派はいつでも少数派を潰そうとしていませんか?
だからといって、いつでも多数派が正しいわけではなさそうです。

 

少数意見を権威で抑えつけたがる社会に対し、公然と反対論が主張されたのである。

 


世間一般の意見

自分が尊敬しているひとびとと同じ意見のときだけは、自分の意見を絶対に正しいと思ってしまう。自分一人だけでの判断には自信がない分だけ、「世間」一般の意見なら間違いないはずだと、絶対的に信頼してしまうのだ。

 

これは日常生活でもよくあることですね。
特にTVに出ている著名人や、SNSインフルエンサーの影響がわかりやすいですね。
右へならえ!で安心する人たちですね。

 

まあ、大勢が同じ意見を言っている中で
自分一人だけ違うことを発言するのは勇気がいりますからね。右へならえ!をしていたら、安心できる人もいるのでしょう。

 


好き嫌い

例えば、「食べ物の好き嫌い」は個人の勝手ですよね。
でも、それ以外の好き嫌いを他人に押しつけるのはどうなんでしょう。
それは自由か、暴力か?

 

(前略)世間一般の意見とは、一番まともなものでさえ、他人にとって何が良くて、何が悪いかについての、一部のひとびとの勝手な意見にすぎず、たいていは、そういうものですらないからである。大衆は、人の行為を非難するときも、その人の気持ちとか事情とかについては、いっさい関心がなく、ただ自分たちの好みだけで判断する。

 

この部分を読んで私が思い浮かんだのは、
最近ツイッターで起こった、若年貧困女性支援団体への
執拗な嫌がらせや誹謗中傷の件です。

 

公的に不正がないと認められたにも関わらず、
なんやかんや執拗にイチャモンをつけられて
しまいには東京都からの支援が突如終了し
活動の継続が危ぶまれる事態にまで追い込まれました。

 

まさにミルの言う『大衆は、人の行為を非難するときも、その人の気持ちとか事情とかについては、いっさい関心がなく、ただ自分たちの好みだけで判断する。
というのがSNS上で大規模に実現してしまった例ではないかと思います。

 


泥酔する自由はある?

他にもミルは面白いことをたくさん言っています。
あまり引用すると著作権に引っ掛かりそうなんで
かんたんに説明すると、

 

お酒をのんだら、人間が変わる人っていますよね?
普段は大人しいのに酒を飲んだら暴力的になる人とか。

 

思い出すのは俳優で歌舞伎役者の人が
酒を飲んでホステスに暴行した事件ですね。

 

他にもこんな事件が。

【速報】長生村議長、傷害容疑で逮捕 酒に酔い、運転する27歳女性を殴ったり髪引っ張ったり…シートベルトで首締めも 千葉・茂原署【続報あり】(千葉日報オンライン) - Yahoo!ニュース

 


ああいう人は、果たして人前で酒を飲む自由があるのか?
というようなことも言っています。(超意訳)

 

飲んだら暴力をふるうと分かっている人に
酒を飲ませるのは、または本人がすすんで飲むのは
犯罪ではないのか?
とかね。

 

もし、それが犯罪であるなら、

この人は酒を飲んだら暴力的になる」とわかっていて

飲むのを黙って見ていた人も
何らかのの罪に問われる可能性がでてきますね?
飲酒運転を黙認したみたいに。

 

その他にもいろいろな事が書かれていて
おもしろかったです。

 


まとめ

訳者あとがきにも書かれていますが
『読んでいるうちに自分の頭まで良くなったような気分になりますよ。』
という言葉がピッタリの本です。

 

訳者は中高生に読んでもらいたいそうですが
中年の私でも楽しんで読めました。

 

それにしても引用しすぎて怒られないか心配です。

 

それでは、お読みいただきありがとうございました♪